第193章 〜おまけエピソード〜(4)
午後八時前。
コンコンッ。
ドキドキ鳴る胸を落ち着かせて、緊張感しながら、ノックをする。エプロンの裾をぎゅっと握り、
カチャ……。
開いた扉を見て、
「あ、あの……お夕飯出来た…から///」
家康と目を合わせて、その新婚さんみたいな台詞を言うのがむず痒くて、しどろもどろになる。
「ちょうど、今、予備校の課題が終わったとこ」
頭上から聞こえた、冷静な声。
変に意識して恥ずかしがっているのは、自分だけなのかな……って、思ってチラッと上を向くと……。
次の瞬間。
家康は、パッと視線を逸らす。
ドキッ。
(……もしかして、家康も照れてる?)
ほんのり赤くなった目元。
それを見て、かあっ///と、私はますます顔が熱くなって俯いた。
何となく、そのムズムズした雰囲気にお互い口を閉ざしてしまい。
そのまま、沈黙。
(そ、そっか///私が、扉の前に居たら家康が出れない)
そのことに気づいて、クルッと背を向けた時……ふわっと身体が後ろに引き寄せられて……気づいたら家康に背後から包まれていた。
「家康……?」
顔を動かそうとすると、
頬同士がぶつかって、家康の柔らかい猫っ毛の髪が視界に映る。
「……前向いてて。俺、多分……今、バカみたいに顔。緩んでるから、見せれない」
幸せ過ぎて。
(……私もだよ)
まだ高校生の私達には、少し遠い未来。でも、少しでも早く、その日が来ると良いな。
そう、心の中で密かに思った。
大きなダイニングテーブルに四人。
「栗ご飯うまいよ。ひまりちゃんみたいに、ほんわかして優しい味だ」
「ほんとですか?良かった〜おばさんに隠し味は任せるからって言われて、色が出ない程度に昆布を少しだけ」
「ひまりちゃん。今日はおばさんじゃなくて?」
「ふふっ。はい!お母様!」
「また、やってんのソレ」
黙々と静かに食べていた家康も、そのやり取りには、しっかりと口を挟んだ。