第192章 〜おまけエピソード(3)〜※R18
メールじゃなくて、わざわざ用件を書いたメモを残す母親。昔、父さんと二人暮らしをしていた時の名残らしい。
母さんはマイペースだが、
一応、元看護婦。
その当時も一応、携帯にメール機能は備わっていたが、お互いが病院勤務。今とは違い使用不可の為、基本はメモのやり取り。まぁ、母さんは曰く、自筆のが愛情を感じるから……と、俺にじゃなくて、前にひまりにチラッと話していたのを聞いた。
自分の親のことでも、たまに直接じゃなくて、間接的にひまり伝えで色々、知った気がする。
手首を横に動かし、
視線を落とせば、腕時計の針は午後一時過ぎを指していた。多分、五時頃には帰ってくるはず。
(あと、三、四時間はある)
空白になったこの後の予定に、
思考を巡らせていると……
クイ、クイッ。
いつまでも反応しない俺に、ひまりは催促するように、今度は強めに裾を引っ張った。
(……はぁ。やめてソレ。心臓に悪いから)
嬉しいし、可愛いけど。
今はやめて欲しい。
俺とは違い、
頭と行動が一緒に動くひまり。
チラッと顔を横に向ければ、
「ありがとう」見上げる瞳にそう言われ、伸びてきた手からメモを受け取り、テーブルの上に戻す。
「ふふっ。ワサビ、今頃!緊張してぷるぷるしてるかも!」
腕と腕がぶつかる距離。
間近で聞こえる、無邪気な声。
(俺も何気に、緊張してるんだけど)
予定外の二人っきりに。
「ソファの端っこで、小ちゃくなって〜」
震えるワサビを想像したのか、口元に両手を運びクスクスと笑うひまり。
白いニットの袖からは、
手の甲が隠れ指先だけが出てて……
つい、目が離せない。
只でさえ小柄なのに、
その袖の所為で、余計に小さく見える。