第191章 〜おまけエピソード(2)〜
それから、二通ぐらい返事がなくても書いて……いつの間にか、家に来ても手紙の話も、白鳥の話もだんだん減り、秋にはしなくなった。
ただ、中学になってもポストを覗いては、たまに表情を曇らせていた横顔。
(そんなの見てたから。無意識に、態度に出たのかも)
白鳥がうちに来るって聞いて、真っ先に浮かんだのはひまりの笑顔。
ポストを覗いて、ぱぁ。と、笑うあの表情が一番に頭に映った。
そんなことを思い出しながら、
まさかと思って、
国内線ロビーに来たら……
ガラガラと、トラベルバッグを引きずる人。両手に抱えきれないぐらい、土産を持つ人。手を繋ぎながら歩く、家族。
そこに紛れ、
キョロキョロと不審な動きをする……ムートンブーツ履いて、白のニットワンピを着た後ろ姿を発見した。
(っとに……)
どうやって、声を掛けようか。
久々に悩んだし。
「てへっ。間違えちゃった」
「……ドジ。じゃない、ばーか」
「うぅ……今日は言い返せない」
ごめんなさい。と、チラッと俺を見上げる顔にドキッと胸が跳ねる。迷子とは違う、もう一個の素質。そのお陰で俺の方が何にも言えなくなる。
ひまりは白鳥の前に立つと、スッとクローバーのファイルを差し出す。
「天音ちゃんも、ギリギリまでごめんね。あのね、コレを収納出来そうな可愛いファイル見つけて、お店にちょっと寄ったら、はぐれちって」
キョロキョロして、
急に居なくなった理由がそれ。
携帯は案の定、車に置いてきていたらしい。一言、声かけるのも忘れるぐらい一目惚れしたらしい。
(隣に居る俺よりファイルとか。後で、お仕置き決定だし)
「これ……っ…も、しかして…」
白鳥は、写真サイズのファイルの中身を見て目を開く。
「……クラスの皆んな、喜んで書いてくれたよ。簡単なメモ書きのプロフィールだけど」
「ひまりちゃん……」
「今日は笑顔で、お見送りしたいから……。だからね!手紙待ってるね!海外の住所は分からないから、天音ちゃんが送ってくれないと!」
返事を書ける日、楽しみにしてる!
ふわりと花が咲く。
そして、白鳥はそれを胸に抱き……
荷物チェックを終え、
「約束!!」
保安検査を潜る手前で声を張り上げ、奥へと消えた。