第191章 〜おまけエピソード(2)〜
空港の展望デッキ。
そこから、飛び立つ機体を見送る。
青空に向かって平行線に白い線を作り
、あっという間に小さくなり雲の中へと姿を消した。
「行っちゃったね……」
ひまりは暫く空を見つめた後、俺の隣に来てコツンと肩に頭を乗せた。
口を固く結び、
ゆっくり瞬きをして、
黙ったまま。
でも……
ブランコから、ただ自分の影を見つめていた頃とは、違う。言葉はなくても行動で、伝えてくる。
それは俺も、同じ。
「……我慢しなくて良い」
腕を回して肩をグッと引き寄せ、頭を抱えるようにして、ひまりの視界を塞ぐ。
「……っ、く…な、んで、…わかるの……っ…」
震えだす肩。
隠した目元から、はらはらと光の筋が伝う。最初の涙が溢れてしまえば、あとはもう……とめどなく流れるだけだった。
「分かるよ。昔も今も……多分、これからも」
俺がひまりに夢中だから。
あの頃の俺は怒らせたり、笑わせたりして、誤魔化すことしか、出来なかったけど……
これからは、笑いたい時に笑わせて。
泣きたい時に、安心して涙を出せるように……
してあげたい。
言葉なしで完全に全部のひまりの心を見るのは、まだ無理。さすがに、それは一生掛けても無理かもしれないけど……
「ご、……め、んね。い、まは…」
「無理に言わなくて良いから。落ち着いて話したくなった時で、良い……」
いつでも聞くから。
ずっと側に居るから。
「……っ、……ぁ…」
静かに頷いて、声を押し殺して……
俺の隣でひまりは、泣き続けた。
あの時、流せなかった涙の分まで。
〜おまけエピソード(2)〜完〜