第191章 〜おまけエピソード(2)〜
一年間続いた、手紙のやり取り。
その年の年賀状。
間隔は、早くて一ヶ月。
遅くても二ヶ月。
届くとすぐに俺に報告して、一緒に他愛のない日常を書いた。
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再び訪れた紅葉。
その日は一緒に下校出来ず、塾の帰り道に公園のブランコで、ぽつんとひまりが座っているのを見つけた。
赤い地面に移る自分の影をじっーと見て、たまに思いついたようにブランコを揺らし、足で止める。
その繰り返し。
泣いてはいなかったが、声が掛けづらいどんよりとした雰囲気を持っていて……
暫く俺もコンクリートに移る、自分の影に視線を落としてから、顔を上げランドセルを背負い直し、塾用の肩にしっかりと掛け、声をかけた。
「あ、おかえり。家康もブランコ乗りに来たの?」
「まぁ……。そんなとこ?」
全然違うけど、ここは合わせてランドセルと鞄を下ろして座る。
元気ないのは一目で分かっても、気の利いた言葉を思い付くような年じゃない。
ひまりが喋り出すまで、
待つしかなかった。
地面に伸びる二つの影。
次第に夕陽が落ちて、消え始めた頃。
「天音ちゃん。体調でも悪いのかな……」
ぽつりぽつり口を動かし始め、
「それとも、私が何か変なこと書いちゃったのかな……」
夏休みに書いた手紙の返事がこない事を、気にしているのが分かる。最近、ポストを覗き込んだ後の表情は、曇っていたのは薄っすら気づいてたし、しょぼくれてんのも多分、その事だろうとは予想はしていたけど……
俺はブランコから立ち上がり、ひまりが持っている鎖を、思いっきり左右に揺らす。
「わぁぁ!……もうーっ!」
「あ。ハムスターひまり」
「家康が急に揺らすからでしょ!」
「ひまりが、鬼みたいに怒る前に帰ろ」
プンプン怒って、追いかけてくるひまり。
「あっ、かんべー」
「いーっだっ!!」
こんな風に時々、気を紛らわせながら……気がつけば、俺たちは中学生になっていた。