第190章 〜おまけエピソード(1)〜
そして、学園の石碑前。
しゃがみ込み、肩を引っ付け、手を泥まみれにしながら、仲良く二人て穴を掘っていた。
「昨日の雨で土、柔らかいね!」
「スコップ持ってくるとか、俺達の案にはなかったわけ?」
珍しく計画不足だった家康。
文句言いつつも、表情は不機嫌ではなく、寧ろ優しい。ひまりは、そんな裏腹な態度に「やっぱり天邪鬼?」と心の中で、誰に問いかけることもなく、呟く。
「佐助に何て言ったの?」
「え?普通に、これはきっと戦国姫?ひまりさん?が自分自身に書いた文だと思うからって……」
そしたら佐助は、君が言うならきっとそうだと。それが一番良いと。特にこの文に関しては研究はしていないらしく、好きにして欲しいと言われたことをひまりは話す。
「……何で、そう思ったの?」
「う〜ん。直感?って、わけじゃないけど。何か根拠があるわけでも、なくて……ただ……」
ひまりはそこで一旦、言葉を区切り、汚れた手を擦り合わせ泥を少し取る。そして、文を広げ……
『時を越える力が現れても、決して愛する人を、自分を見失わないで』
「幸せでも、やっぱり不安になる時はあったのかな?って。だから、そんな時に自分に宛てて書いたんじゃないかな?」
時を越える前。
時を越えた後。
そしてこれを書いた時。
「どんな時の自分でも、どんな状況の中でも一番大切なことだよって……伝えたかったのかな?届けたかったのかな?って」
そう話すひまりの横顔は、息を呑むぐらい綺麗で家康は無意識に、触れていた。
「あ!わざと泥つけた〜っ!」
「へ?あ。……忘れてた」
「もーっ!えいっ!……ふふっ!たぬき髭〜〜」
「ちょ!何やって!」
きゃーっ!!二人は、すっかり目的を忘れて大騒ぎしながら、笑い声を上げる。
文の上に添えられた、
咲き始めたピンク色の山茶花の花。
「今頃、ハガキ届いてるかな?」
「投函したの昨日の夕方だし、届いてるんじゃない」
二人で一緒に文と花を掘った穴の中に入れ……土をかぶせると、最後にぽんぽんと完了の合図。
そして顔を見合わせ。
「「ぷっ!!」」
更に笑った。
永遠にこの文の想いが続くようにと、
愛を込めて。
〜おまけエピソード(1)〜完〜