第190章 〜おまけエピソード(1)〜
雷が鳴り響く中、
二人は赤い橋で……
『ごめん。俺が悪かった』
『……寂しかったんだから!』
昔のように、いつまでも変わらない想いを伝え合い、仲直りしたんだよ。
老舗『まん珠沙華〜朱〜」
店先で話し終わると、
つつじはゆっくり、茶をすする。
「そっかぁ!それが、赤い橋の噂話の元なんだ!」
孫娘の縁は赤いランドセルを背負ったまま、足をぷらぷらさせながら笑う。
「そのお姫様が橋を渡り切る寸前で、名前を呼ばれて振り返ったみたいでね。本当の願いが見える……と、オマケまで付いたんじゃないかい?」
会いたいと願った男が、
そこに立っていたんだからね。
おばぁちゃんは如何して、そのお話に詳しいの?そう聞かれ、つつじはもう一つの話を始める。
コトリと湯呑みを置き、
「その後、二人は帰る道中に呉服屋に寄ったんだよ。老いた亭主に、その反物を所望した経緯と、赤い橋の出来事を話したみたいでね」
久しぶりに会えて、
話に花を咲かせたらしい。
「亭主は、若い頃から二人を慕っていてね。その話を忘れないように、書き記してもいいかと尋ね、二人は名前だけは伏せて欲しいと頼み……」
その代わりに、お姫様は仕立てたばかりの着物を。男は着ていた着物を置いて。雨で濡れて汚れたままで、申し訳ないがと逆に頭を下げ、店を後に。
お姫様は、小さな蕾の花を大切に持って、男は綻びがかった羽織だけは大事に着て……。
「その呉服屋の息子さんは、役者をしていてね。……亭主さんが亡くなった十数年後、書き記した物と着物を受け継いで京都で呉服屋を開いたんだよ」
『山茶花〜淡紅〜』と、店名を付けて。
縁は、その名前を聞きキョトンとする。そして「あ!!」と、大きな声を上げ、
「お姉ちゃんとお兄ちゃんにあげた着物。それを持ってきた、呉服屋さんと同じ名前だ!」
ピンッ!と、顔の横で人差し指を立てて、嬉しそうに笑った時……郵便屋が届けにきた一通のハガキ。
ハロウィンのデザインを見て、店内を飛び跳ねる。そして、つつじと一緒にハガキを読んだ。
名前は伏せても、
『ひまり』と『葵紋』は、
しっかりと着物には刻まれていた。