第38章 「恋の和歌集(2)三成様編」
「ひまり、またね〜」
「うん!ばいはーい」
帰って行く友達に手を振りながら、私は下駄箱で靴に履きかえ昇降口に向かう。
何だか雲行きが怪しそうな空。
(予報では、一日晴れになってたんだけど)
折りたたみ傘を持ってないか、鞄をガソゴソ探っていると……
視界が急に真っ暗になる。
「だれでしょう?」
「……ふふっ。う〜ん。誰かな??」
三成君なのはすぐに解ったけど、私は笑いながらあえて惚けてみた。
「本当に分かりませんか?」
「分からないって言ったら、どうする?」
「……こうします」
え……!
すると、そのまま後ろに体が引っ張られてちゅっ。と音が聞こえ頬に柔らかい感触が伝わり……
「ちょ///三成君!な、なにしてっ///」
「嘘ついた、お仕置きです」
やっと明るさを取り戻した視界。
ほっぺに軽く触れ、くるりと振り返ればとびきりの笑顔を浮かべた三成君。
「も、もしかして今っ///」
「参りましょうか、お姫様」
はぐらかされた!
ニコニコ笑顔で私の荷物を持つ三成君にそれ以上追求するのは諦めて、私は隣を歩き出す。
「三成君は教科、何が得意?」
「得意ですか?どの教科も選び難いですね」
「頭良いとそんな台詞、言えるんだね」
前に家康に聞いた時も、似たような返事が返ってきたしね。
ーーどれも一緒だし。
脳内の作りがどんな風になってるか、ほんと見てみたい。
市内の図書館を目指し、私達は人通りの少ない歩道を通る。三成君は、ちょっとドジな所もあるけど……
「ひまり先輩。こっち側を歩いて下さいね」
車道側を避けてくれたり、
「私が支えますので、足元気をつけて下さいね」
舗装されてない道は、すぐに手を差しだしてくれて本当に優しい。