第37章 「恋の和歌集(1)三成様編」
(確か、あの子……築城さんだよね?去年、家康と同じクラスだった)
予備校が一緒で、家康のファンクラブを作った子だってゆっちゃんから聞いた気がする。
邪魔するのも悪いし、後にしようかな?
でも、ホームルームないから掃除終わったらすぐに帰りになるし……。
(伝えるだけだし、大丈夫かな?)
とりあえず、家康の席に向かう。
「予備校の帰りに、少しの時間でいいから〜〜」
「…………無理」
ってか、
かなり不機嫌そうなんだけど……。
付き合い長くても、ちょっと声掛けづらいレベルまでいってるかも。
私は戸惑いながら、後ろから家康の肩を叩き築城さんにお伺いをたてる。
「話してる最中に、ごめんね?」
ちょっとだけ、良いかな?と、聞くと凄い目で睨みつけられて、思わず頬が引き攣る。
(さすが、リーダーさん。凄味があって、迫力がある……)
「何、ひまり」
振り返った家康はいつも通りで、安心する。
「あのね!今日、三成君に勉強教えて貰う約束してて」
「はぁ!何で、あんなヤツに頼むわけ!そんなぐらいなら、俺が教えるし!」
席を立ち上がり、
詰め寄ってくる家康。
(あれ?さっき、築城さんには無理って言ってなかった……?)
「でも、もう約束したから」
「俺の許可なく三成と二人っきりとか、絶対許さないから」
いつから私は、家康の許可が必要になったのが疑問に抱きつつ、とりあえず一緒に帰れないことを伝える。
すると、家康に歴史のコツ教えるとか言われて、ホイホイ頷いたとか言わないでよ?と図星を突かれ、うっ。と呻る。
「……どうしても行くなら、俺も付いてく」
「家康君、今日は夕方に予備校あるの忘れてない〜」
女の子は後ろから家康の腕に手を回し、ギロッと突き刺さる視線を私に向けた。
「私が一緒に帰ってあげる〜」
「……触んないでくれる」
家康は凄い勢いで築城さんの手を振り払い、
「なら、明日。他の教科、教えてあげるから」
私を引き寄せながら、家康は少し顔を下げて……
俺の部屋においで。
私にだけ聞こえるように、囁いた。
弾むように、
胸が何故かきゅんって鳴って。
気づけば、コクリと頷いてて……。
「………邪魔な、女」
築城さんの声は、届かなかった。