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イケメン戦国〜天邪鬼と学園生活〜

第190章 〜おまけエピソード(1)〜




次の日。女は文通り、父親と共に親子水入らずの時を過ごす。子育てもひと段落とまではいかないが、手は大分離れ、以前よりもゆっくり流れ出した時間。

その分、湧き出るように溢れ出した侘しさ。


「もう、子は作らんのか?」

「ふふっ。その内に孫が出来るかもしれないのに、ですか?」


父親の肩を揉みながら、女は広間で少しでも親孝行出来るひと時を、噛み締める。


「お嫁に行く前にここで過ごした束の間が、懐かしいです。ずっと何かお返ししたいと、思っていましたから」

と、言っても肩揉み程度では大した恩返しにはならないかと、女は笑うが「十分だ」と背中から聞こえた返事。


「来世から戻り、すぐだったからな。貴様の輿入れは」

思い出すかのように、目を細め上座から下座に視線を落とす。


ワームホールの強制的な力なのか、神の仕業だったのか。一度は元の世に引き戻され、再びこの世に戻って来た女。

来世で暮らしている間に、子を宿しておることが分かり、腹が大きくなる前にと、祝言を急いだ。

次から次へと城に訪れる商人。

花嫁道具を選ぶ日々に明け暮れ、父親とのんびり過ごす機会を、逃していた。


「昨晩、石碑の前で何をしておったのだ?」

「……結婚前夜の私に。会いに行ったのです」

「結婚前夜?」


女は当時、知らされていなかった。次の日に、結婚式が執り行われることを。今だからこそ、あの夜が現代で言う結婚前夜だった言える訳だ。


「ふふっ。お父様に武運のお守りを渡した日です。あの夜、実は石碑にこっそり行ってました」


少女のようにペロッと舌を出して、女は今更ですが。と、前置きした後、城を抜け出していた事を謝る。


「家康の羽織を仕立て、その端切れで、お父様に武運のお守りを作っていたら……何だか、来世に置いてきた小袖の事が気になって」


愛する者が持っている武運の守り。
それは、その小袖の端切れで作った物。


「……平和な世と繋がってるなら、更にご利益があると。……そう、笑顔で言ってくれました」


けど、あの時の私は……



当時の事を話す。



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