第189章 〜後日談〜Halloweenイタズラ〜あとがき
初秋の夜空に浮かんだ満月。
輪郭はくっきりとまん丸。
そして明るく、温かみを持っていた。
「……まん丸お月様」
ひまりは、心を奪われたようにうっとりとした様子で見上げる。
「上向いてると、転けるよ?」
家康はそう言いながらも、しっかりと自分の腕に絡みついた、もう一つの腕を見て……
(まぁ、大丈夫そうだけど)
月を軽く見上げ、
また前方に視線を戻す。
「神様でもイタズラするのかな?」
「まさか、あの石のこと言ってんの?」
石碑のレプリカに埋めた石。
緑から赤色に変わる神秘的な現象。家康も後から聞き、石のことは知っていた。
ひまりはスッと髪を掻き上げ、
「……月。本当に綺麗だね」
少し切なげに呟く。
さぁー……と、吹いた夜風。
甘栗色の髪が月に明かりに照らされ、光りながら靡く。
「ふふっ。確か、狼男は満月見て、オオカミに変身しちゃうんだもんね!なら、家康は見ちゃ………きゃっ!」
不意に腰元に回された腕。
グイッと引き寄せられ、ひまりは
家康の胸元に顔をぶつける。
ぶつけた鼻を押さえ、
顔を上げた瞬間……
「………っ」
息を呑む。
満月の明かりに照らされた家康の顔。
ドキッと言うより、
ドクンッ……そう胸がなるぐらい……
綺麗だった。
「い、えやす?」
「……綺麗」
一瞬、心の中を読まれたのかと思いひまりは言葉を失う。
しかし、頬に添えられた手と……
「最近のひまり。時々、心臓なんか簡単に止まるぐらい」
……綺麗。
自分に向けられた言葉だと知り、頬を染めた。
翡翠色の瞳が、赤く……
激しいキスを受け止めながら、そんな気がしてならなかった。