第37章 「恋の和歌集(1)三成様編」
五月の終わり___
テスト期間に入り、授業を受ける生徒の表情が自然と締まる。
私語も減り、静けさに包まれた教室でカリカリとノートにペンを走らせる音が響き、居眠り常習犯の家康も流石に目を開けて頬づえを付き、黒板に視線を向けていた。
窓際に座る政宗は、ヒラヒラと風に揺れるカーテンとグランドに視線を落とし、呑気に欠伸をしていて……
私は手で隠しながら、こっそり笑う。
政宗は卒業後、和喫茶を継ぐ為に修行に行くって言ってたから、進学志望の私達みたいに切羽詰まった感じはない。
その分、毎朝仕込みを手伝ったりしていて多忙な日々を送ってるから、ほんと尊敬する。
「ここ、テストに出るから良く見直しておくように」
全ての授業が終わり、軽くその場で伸びをしていると……
ブッ…ブッ…
鞄の中で振動が鳴っているのに気づく。
携帯画面。
一件の受信メール。
(あっ!三成君からだ!)
『帰り、昇降口で待っています』
『ホームルーム終わったら、すぐ行くね!』
(送信っと♪)
今日私は、三成君に勉強を教えて貰う約束をしている。
そう言えば、家康にまだ言ってなかった。
携帯を鞄の中に戻し、
一緒に帰れないって伝えようと……
席を立ち上がると、
「家康く〜ん♡私、数学苦手だから教えて欲しいなぁ」
家康の席に他のクラスの女の子が珍しく来ていた。