第189章 〜後日談〜Halloweenイタズラ〜あとがき
パレードもいよいよ終盤。
お茶会をイメージした、コーヒーカップのフロートが現れる。
その上で、楽しそうにティーパーティする、お化け達。
「不思議の国のアリスでも確か、お茶会の場面あるよね!!」
休憩所にある二階のベランダ。
そこはパレードが一望出来る、特等席だった。光の世界にすっかり夢中になるひまり。童心に返ったように、厚底の靴を履いてるのも忘れ、爪先立ちしてベランダの手摺から顔を出す。
「ちゃんと羽織ってて。風邪引く」
「ふふっ。狼さんすっかり優しくなったね。ありがとう」
ひまりは一度振り返り、肩にかけていたジャケットに腕を通す。そして、前を向き幸せそうに笑う。
家康はひまりを、腕と腕の隙間に閉じ込める。ベランダの手摺に手を突き、口元を緩め頬に幸せを浮かべた。
その頬を掠めるのは、
ひんやりとした秋夜の風。
お陰で気が狂いそうだった熱も、徐々に収まり、今は幸福感に満たされる。
ひまりもそれは同じ。
幸せな時間を噛み締めていた。
「戦国武将と戦国姫は、どんな風に一緒に過ごしてたのかな?」
「何、急に?」
「何となく、かな?だって、五百年前には今みたいに平和じゃないし、こんな綺麗なパレードだって見れない。でも……永遠の愛、巡り合う運命の愛を…誓うぐらい…」
ずっと、一緒にいたい。
そう願わずにはいられない。
そんな時間を、一緒に過ごしていたはず。
ひまりは、一呼吸を置いた後。
「……今の私がそうだから」
パレードから視界を外して、ジャケットの前を搔き合せると……静かに俯く。
家康はそんな姿に堪らず、腕を手摺から離してひまりを抱き締める。
「こんな風に、過ごしてたんじゃない?……一緒に居る時は」
今の俺も幸せだから。
スッと、鼻を軽く啜り……
ゆっくりひまりは顔を横に向ける。家康はその横顔に……パレードの光よりも魅入られ、頭を傾けると……
そっと、
唇を重ねた。
心を繋ぎ、抱き合い、触れる時間。
それは約五百年前であっても……
例え僅かでも……
訪れた時間ではないかと、
二人は思った。