第188章 〜後日談〜Halloweenイタズラ〜姫主様×家康様
意地悪なのはひまり。
ハジメテを貰ったあの日の夜から、
どれだけ夜が長いか。
「今度は、前向いて」
そう言えば、俯いて少し悩んだ様子を見せ、ジッと動かなくなる。多分、前向いたら全部脱がされるのが分かってるから……なんだろうけど。
「も、うすぐパレード……始まるかも…し、れない」
「まだ、一時間ぐらいある」
間髪入れずに答えれば更に俯いて、今度は口も結んだみたいに動かない。
思わず吐いた溜息。
ひまりに対してじゃない。
自分に対して吐いた。
手にした途端、彼女になった途端。
今まで欲しくて堪らなかった欲望が。
触れたくて堪らない欲望に変わる。
似てるようで、少し違う欲望。
手袋をしていない方の手で、
ふわふわの髪に触れる。
俺は……
「良い子にするから……」
ひまりに触れていないと、
前とは違う意味で……
「嫌いにならないで……っ」
(え……)
失いそうで、
不安なのかもしれない。
いつの間にか振り向いて、俺にしがみ付いていたひまり。
「な、んで俺が嫌いに……」
どうしたらそんな風に。
「だっ、て……さっき、溜息吐いてっ」
泣いてはないけど、泣きそうな声。
どうやら、俺が呆れて溜息を吐いたと勘違いしたらしい。
ひまりは、俺のベストを掴んで……
「触れられるのが……嫌な訳じゃ…ないの。ただ、触れられる度にドキドキするし、恥ずかしいし、まだその…一回しか……だから、どうしたら良いか全然…分からなくて。でも……」
もっと、触れて欲しいって思う自分もいて。
「こんなんだと、嫌われちゃうかもって、不安になったりもして。だから……だ、から…」
その言葉を聞いて、耳を一瞬疑う。
付き合ってからも、自分の中で知らず知らずの間に付き纏っていた不安。ひまりにさせていた不安。
(信じてないつもりは、ないけど……)
まだ、どっかで夢心地だったのかも。
片思い歴、やたらと長かったし。
俺は腕を回して、
「……溜息吐いたのは、自分に呆れてただけ。ってか、ひまりを嫌いになるとか絶対ない」
あり得ない。そう断言する。