第4章 一度目の夏を
あっという間に暑くなり、夏になり、テストも終えてインハイになった。インハイに出ない部員も会場に行くことになっていて、あっつい中ひたすら待機なのは来年出たい想いばかりが募り、目の前を通る選手を見て上には上が居て、それを超えたいとも思う。
『楽しい?』
ふと名が言っていた事が頭に浮かぶ。楽しいよ、新しいものを見られて嬉しく思うよ。そう想いに更けていると先頭を走るチームが来て応援に精をだす。そして、傷を一つ残しつつも安定の箱学優勝を得て今年のインハイが終った。
お盆時期の皆が帰省する日。
(あれ?)
新開が食堂を覗くと荒北が荷物を横に一人座っている。
「靖友も帰るんだろう?」
「おー」
声をかけると目の前に置いてあったスマホが鳴り、瞬時に反応する荒北。そのくせ、対応はそっけなく
「今行く」
と通話を切ると荷物を持つ。聞かなくても相手が誰だか分かる自分がにくくなる新開。
「名か」
「あぁ」
「家隣なんだっけ?」
「そ」
そして寮の門まで行くと真っ白な人影。いつも束ねている髪はおろされ、白いワンピースが風にゆれる。
「あれ新開君も今日帰省?」
「そう・・・だよ」
その姿にまるで一目惚れした様な気分に陥る。3人でバスに向かうと周りが何時もと違う名に噂する。名の引くキャリーケースを見て、
「俺がもってやろうか?」
なんて言えば
「甘やかすなぁ新開!」
「むしろ、荒北はそーゆー優しさを持ちなよ!!」
と荒北が怒られる。
「そんくらい自分で持てよ」
とぶつぶつ言う荒北を放って新開が再度言うと本人からも大丈夫と言われてしまう。バスに乗ると荒北の前に新開が座り、名は迷ってから新開の隣に座った。
「荒北とは後でずっと一緒だから」
と笑うがやはり荒北の代わりなのが残念に思う。駅に着き、
「私達あっちだから」
「そっか、じゃぁまた。」
「うん、新開君も」
「じゃな」
「靖友もな」
そうして別れた後、ふと後ろを向くといつの間にか名の荷物を引き、お土産に気づいた名が荒北の腕を引き、めんどくさそうに連れて行かれる荒北の姿があった。
「見せつけてくれるなー」