第21章 15,5(楽視点)
15,5
楽視点で短め
駅前で行われたって言うIDOLiSH7のライブに無名のアイドルが現れたとネットで噂になっていた。
俺は興味本位でそいつのことを調べていた。
現時点で分かっているのは、その日に初めて現れたと言うこととIDOLiSH7に関係のある奴だと言うことだけ。
「動画でもあればいいんだがな…」
「楽、どうしたんだ?」
「IDOLiSH7の後に歌った奴を調べてる」
「ネットニュースじゃなくてSNSで調べて見たら?」
その手があった。
無名のやつなんて基本的にニュースにはならない。
あの時実際に見たやつならどうだ。
「これなんじゃない?」
「天…お前…」
「見るんじゃないの?」
「おう」
天が見つけたのは一般の人が撮った動画だ。
雨が降っているせいでよくは見えないが…
『ーーーーッ!〜〜♪』
雨に混じりながら聞こえるこの声は、俺が知っている声だった。
黒尽くめで顔は見えないが、あいつに間違いない。
「…あいつ」
「なに?楽、この子知ってる?」
「……多分な」
本人に聞いたわけじゃないから断言は出来ない。
あいつの事だ。俺には知られたくないと思う。
「いい声ではあるね」
「こんな悪条件でここまで声が出るのは相当だ…あ」
曲の途中で動画が止まる。
折角いいところだったのに。
「続きはねえのか!?」
「楽うるさい」
「撮った子のコメントは…"Reyっていうデビュー前のアイドルらしい。すぐに後ろに下がって詳しい事全然わかんない"だって」
Reyってまさか零の芸名なのか…?
前にあった時も俺に何も言ってこなかったし、誰にも教えてないのか?
確かめるか。
「ちょっと出てくる」
「撮影まで時間ないから早く戻ってこいよ」
「分かってる」
◇◇◇
マナー違反だってことはわかってる。
あいつが携帯で出前取ってるのが悪いんだからな。
と言い聞かせつつ、自分のスマホにある音無零をタップする。
10コール以上するがなかなか出ない。
俺の番号だって知らないはずだし仕方ないか。
「やっと出やがったな!?」
《え、もしかして…楽?どうして私の番号知って》
「そんなことよりなんだよあの動画!」
《あの動画って…?》