第36章 Rey27
事務所を売り込むにはまとめての方がいいのはわかる。
でも先にデビューしたのはMEZZO"と私だけだ。
壮五さんと環はMEZZO"として走り回ってるのに、私は…?
「仕方ないですけどね。現に今も人手が足りていないし、音無さんに関してはマネージャーもいませんからね」
『う…』
メンバーの多いアイナナは成人組もいるからなんとかなっているところがある。
信用していないわけじゃないけど、紡さん一人では対応しきれないところも出てくるだろう。
「レディをいじめるなんて酷いですね」
「そんなつもりはありませんよ。事実ですから」
『うん。私の考えが甘いだけだから…一織みたいな人がいるから丁度いいよ』
一織ってアイドルよりも経営向けなんじゃないかなって思うけど、それは胸の内にしまっておこう。
◇◇◇
その日の夕方、大和さんが事務所に戻って来た。
「ドラマ出演の話、引き受けてくださるんですか!?」
「ああ」
『乗り気じゃなかったのにどういう風の吹き回し?』
「ちょっとな」
乗り気と言うより、嫌がってたと言うのが正解かも知れない。
でも引き受ける気になってくれたことは前進したって事だ。
「やったー!」
「やったー!すごいギャラが入ります!」
やっぱりお金が一番だよね。
仕事でしてるんだから。
「そういう事情があるなら、先に言ってくれよ。俺だって、みんなにいい弁当食わしてやりたいし……」
「もちろん、それだけじゃありませんよ!ドラマの仕事、俳優の仕事は、IDOLiSH7初です!初めての道を拓いてくれる人が、みんなが信頼している大和さんで本当に良かったです!」
初めての仕事だから紡さんが興奮している。
分からなくはないけど。
「…はは。おだてても何も出ないぞ。でも、まあ……。やってみますか。一生懸命ってやつ」
『一生懸命…か』
「ん、どうした?」
『大和さんの本気って想像つかないなって思っただけ』
「なんなら試してみるか?」
私を挑発するような目で見る大和さん。
試すって一体何を試すんだろ。
「マネージャーと万理さんには見学してもらおうかなー」
「見学って、大和くんがお芝居を見せてくれるって事?」
「まあ、そんなところです。マネージャー、お題くれる?」