第1章 プロローグ
ぼすんっ。
私の体が地面に叩きつけられることはなかった。
それが、幸いなのかどうかはわからないけど。
私は死ななかった。
ヘンテコな顔のペンギンお化けが、私の下敷きになっていたから。
「うわっ……! ごめんなさい!」
急いで体を起こし、辺りを見渡すと…
知らない場所だった。
病院の屋上から飛び降りたのに、辺りに病院らしきものはない。
路地裏のような、暗い場所を空に浮かんだ丸い月が照らしていた。
路地裏の奥には乱雑にゴミが放ってあり、紐で縛ったジャンプや、大人の雑誌が見えた。
知らない場所……。
いや、この場所に見覚えはある。
でもそれは、漫画の中の話じゃ……。
あれこれ考えていると、ペンギンお化けがむくりと起き上がった。
「あ、あの……、大丈夫ですか?」
怪我がないところを見ると大丈夫なのだろうけど、
一応聞いてみた。
『大丈夫』
プラカードで返事をしてきたペンギンお化け。
「あの……、今の年号って、平成ですよね?」
実際、平成の時代でこんな質問をしたら、笑われるだろう。
ペンギンお化けはプラカードをくるりとひっくり返した。
『平成?今は江戸だぞ、 ちなみにここは歌舞伎町』
歌舞伎町。
江戸。
ペンギンお化け。
「……………」
どうやら私は、銀魂の世界にトリップしてしまったらしい。