第3章 歌舞伎町
「お久しぶりですね……ってえっ!?桂さん、彼女さんですか!?」
「彼女じゃない、紗奈だ」
新八君はそういう答えを求めているわけじゃないと思うのだけれど……。
勘違いをされては困るから、自己紹介をする。
「明石紗奈です。桂さんには歌舞伎町の案内をしてもらっています」
「はじめまして。僕は志村新八です」
はい、知ってます。
なんて言えるはずないので。
「よろしくお願いします」
笑顔を返した。
「ところで銀時は……」
「銀さん?一緒に来てますよ。銀さんなら、さっき土方さんと……」
新八君はメリーゴーランドの方を指差した。
そこには黒い制服を着た男と、銀髪の天然パーマ男が胸ぐらを掴み合い、揉めているようだった。
「真選組……やはりいたのか」
「え、気づいてたんですか?」
「あぁ」
もしかしたら、桂さんがメリーゴーランドをちらちら見ていたのは……。
「逃げるぞ」
「あ、はい!またね新八君」
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「あっ、くそ桂に逃げられる!おいコラ、離せ万事屋!」
「あぁ?散々、俺のこと腐れ天パとか言ってたのはどこの誰だ?謝罪しろ」
「テメェ……。公務執行妨害でしょっぴくぞ!」
「やれるもんなら、やってみろよ」
「くそっ!おい総悟!追いかけろ!」
「嫌でさァ。メリーゴーランドが止まるまで待ってくだせェ」
「なんで乗ってんだァァァァァ!!?」
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時折後ろを振り返っては、彼らが追いかけて来ていないかを確認する。
「来ませんね……」
また再度、後ろを振り返ると
メリーゴーランドの馬の上に立ち、バズーカーを構える男が見えた。
『沖田だ!』
ズドーンッ!
エリザベスのプラカードが吹き飛んだ。
火の粉が視界の端で弾ける。
鼻の奥に残る、煙の匂い。
やばい。
多分、やばい。
視界が暗転する中、私は息を吸い込み
「桂さん、逃げて下さい!」
声を張り上げ叫ぶと、私は暗闇に落ちていった。