第2章 和…
「じゃ、母さん、親父さん、また来るわ」
玄関先で俺が靴を履くのを待つ潤が言う。
「運転、気を付けなさいよ?」
「分かってるって…。兄ちゃん行くよ?」
潤が俺の肩に腕を回した。
「お、おぅ。…あの、ご馳走様でした」
俺はガレージまで見送りに出て来た2人に頭を下げた。
「…ハンバーグ…美味かったです。あと、ケーキも…」
“母さん”の顔にパッと笑顔が浮かんだ…と、思ったら見る見る歪んで、細めた目から雫が零れた。
「あの…また来ていいですか? ハンバーグ…食べに…」
「勿論よ…。いつでもいらっしゃい?」
俺の身体がフワッと包み込まれた。
初めて感じる温もりに、俺の中にあった“何か”が溶けて行く気がした。
「ありがとう…母さん…」
数日後、親父さんからメールが届いた。
あの時4人で撮った写真が添付されていた。
そしてもう1枚…
下駄箱の上に飾られたあの写真と、その隣に並べられた“新たな家族”の写真の画像。
赤ん坊だった俺と、大人になった俺が、母さんと良く似た笑顔で笑っていた。
33歳になった俺が、とても幸せそうな顔をしてそこにはいる。
大好きな“家族”と一緒に…
end