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愛される少女【HP】

第87章 S・P・E・W


ムーディ先生が杖を上げ、ハリーに向け、唱える。

「"インぺリオ(服従せよ)"!」

ハリーは緩んだ顔で突っ立っていたが、突然膝を曲げ、跳躍の準備をしだす。それから、ハリーは飛び上がろうとしたのを途中でやめたように、机にまともにぶつかり、机を引っくり返した。

「よーし、それだ!それでいい!おまえたち、見たか...ポッターが闘った!闘って、そして、もう少しで打ち負かすところだった!もう一度やるぞ、ポッター。あとの者はよく見ておけ...ポッターの目をよく見ろ。そこが見るべきところだ...いいぞ、ポッター。とてもいいぞ!やつらは、おまえを支配するのにはてこずるだろう!」

そのあとムーディ先生は、ハリーの力量を発揮させると言い張り、4回も続けて練習させ、ついにはハリーが完全に呪文を破るところまで続けさせた。

「すごいぞ、ポッター!いいぞ!さぁ、次はマーレイ」

私はハリーの後にやるのは、嫌だなと思いながら、教室の中央に進み出る。

「"インペリオ(服従せよ)"!」

私は、最高に素晴らしい気分になった。すべての思いも悩みもやさしく拭い去られ、つかみどころのない、漠然とした幸福感だけが頭に残る。そして、フワフワと浮かんでいるような心地がした。

'1回転しろ...その場で1回転しろ...'

ムーディ先生の声が、聞こえてくる。

'1回転しろ...'

どうして?どうして、そんなことをしなくてはならないのだろう。

'1回転しろ...さぁ'

嫌。そんなことしたくない。

'回れ、今すぐに!'

『嫌!』

自分の声が聞こえてきた私は、ハッと前を見る。そこには、目を見開いて驚いているムーディ先生がいた。

「すごいわ、ユウミ!」

授業が終わり、教室から出たミアが私にそう言う。1発で服従の呪文を破ってしまった私。クラスのみんなも驚いたようで、私にすごいと声をかけてくれた。

「本当ね!1発で破っちゃうなんて!」

私は、困ったように笑う。自分でも1発で出来るとは思わなかった。

「ムーディ先生、まるで、私達全員が、いまにも襲われるんじゃないかと思ってるみたいな言い方だったわね」

しばらく私のことを褒めていたクレアとミアとエイミーだったが、一段落したところでクレアがそう言った。

「被害妄想だよね〜ムーディ先生がシェーマスに話してたの聞いた〜?」

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