第85章 マッド・アイ・ムーディ
ムーディ先生は、コツッ、コツッと木製の義足の鈍い音をホール中に響かせて2、3歩前に出ると、静かに言う。
「さて、おまえの寮監は、たしかスネイプだったな?」
「そうだ」
ドラコが悔しそうに言った。
「やつも、古い知り合いだ。懐かしのスネイプと口を利く機会をずっと待っていた...来い。さあ...」
ムーディ先生は唸るように言う。今度は、私も邪魔しなかった。そして、ムーディ先生はドラコの上腕を掴んで、地下牢へと引き立てて行く。ミネルバはしばらくの間、心配そうに二人の後ろ姿を見送っていたが、やがて落ちた本に向かって杖を一振りした。
本は宙に浮かび上がり、ミネルバの腕の中に戻る。数分後、クレア達と一緒にグリフィンドールのテーブルに着くと、今しがた起こった出来事を話す興奮した声が四方八方から聞こえてきた。私はチラチラと見られているのを感じる。
「ユウミ、すごいわ!」
「本当ね。ムーディ先生に立ち向かうなんて!」
クレアとミアがそう言った。
「本当に、すごかったな!」
「見てたぜ、俺ら!」
二人に続くように言った声に振り向くと、そこにはフレッドとジョージの二人が。
「ムーディに何かされるんじゃないかってハラハラしたぜ」
「俺も、どうなることかと...」
フレッドとジョージが心配そうに言う。
『心配してくれたのね、ありがとう』
私が笑うと、二人も笑ってくれた。
「ムーディといえば、クールだぜ!」
今思いだしたというように、フレッドが声をあげる。
『クール?』
「「あぁ!午後に、ムーディの授業があったんだ!」」
『どうだったの?』
聞いてほしそうな顔をしているので、私は尋ねる。フレッドとジョージはたっぷりと意味ありげな目つきで顔を見合わせた。
「あんな授業は、受けたことがないね」
「闇の魔術と闘うってことがなにかわかってるな」
「あの人は、すべてを見てきたな」
フレッドとジョージは交互にそう言う。
「おーい、フレッド!ジョージ!」
「「今、行く!」」
リーの呼び掛けにフレッドとジョージは答え、私の頭にポンと手を置いてから去っていった。
「授業、木曜日までないわ」
二人の話を聞いていたのか、クレアがぽつりと呟く。
「どうなのかしら?」
『ムーディ先生?』
私は、ミアに聞き返す。