第82章 闇の印
ロンが急いでクラム人形を拾い上げる。私達は、空地を出ようとしたが、急いだ私達がほんの数歩も行かないうちに、バシッ、バシッと立て続けに音がして、どこからともなく20人もの魔法使いが現われ、私達を包囲した。
「伏せるんだ!」
ハリーがそう叫んだと同時に、誰かに掴まれて地面に引き下ろされる。
「"ステューピファイ(麻痺せよ)"!」
20人が大声で叫んだ。私は恐怖を感じて、ぎゅっと目を瞑る。
「やめろ!やめてくれ!私の息子だ!」
聞き覚えのある声が叫んだのを耳にして、私は目を開けた。そちらを見ると、真っ青になって、大股でこちらにやって来るアーサーさんの姿が見えた。
「ロン...ハリー......ハーマイオニー...ユウミ...みんな無事か?」
アーサーさんの声は震えている。
「どけ、アーサー」
無愛想な冷たい声が言った。クラウチ氏だ。魔法省の役人たちと一緒に、じりじりと私達の包囲網を狭めている。クラウチ氏の顔は、怒りで引きつっていた。
「誰がやった?おまえたちの誰が、闇の印を出したのだ?」
刺すような目で私達を見ながら、クラウチがきっぱりと言う。
「僕たちがやったんじゃない!」
ハリーは髑髏を指差しながら言った。
「僕たち、何にもしてないよ!何のために、僕たちを攻撃したんだ?」
そう言ったロンは、肘を擦りながら、憤然としてアーサーさんを見る。
「白々しいことを!おまえたちは、犯罪の現場にいた!」
クラウチが叫んだ。杖をまだロンに突きつけたままで、目が飛び出していた。狂気じみた顔をしている。
「バーティ。みんな子供じゃないの。バーティ、あんなことが出来るはずは...」
「おまえたち、あの印はどこから出てきたんだね?」
長いウールのガウンを着た魔女が囁くと、素早く私達にそう聞いたアーサーさん。
「あそこよ。木立ちの陰に誰かがいたわ...何か叫んだの...呪文を...」
「ほう、あそこに誰かがいたと言うのかね?呪文を唱えたと言うのかね?お嬢さん、あの印をどうやって出すのか、大変よくご存知のようだ...」
ハーマイオニーが声の聞こえたあたりを指差し震え声で言ったが、誰が信じるものかといった表情のクラウチ氏が、飛び出した目を今度はハーマイオニーに向けた。私はこの先のことを思い出しながら、震えている足に力をいれる。