第81章 森の中
「...どうしたんだい?眠らないのかい?」
実体化したトムが、小声で私に問いかける。私が黙ってトムに杖を渡すとわかったようで、呪文をかけた。
「これで外には聞こえないよ。それでどうしたんだい?」
呪文をかけてくれたトムにお礼を言う。未成年は魔法を使ってはいけないが使ったのはトムだし、大勢の魔法使いがいるからおそらく大丈夫だろう。
『...このあと、死喰人が騒ぎを起こすのよ』
「本当かい?」
驚いたようなトム。
『えぇ、本当よ』
「それならなおのこと眠った方がいい。逃げるときに体力がないとダメだろう?異変があったら、僕が起こすから眠るんだ」
トムは、真剣な表情でそう言う。
『...そうよね。わかったわ。トム、起こしてね』
私は、トムが頷いたのを確認して目を閉じた。
「...て...きて...ユウミ」
『トム?』
目をゆっくり開けた私は、自分を起こした人物を見る。トムだ。
「外がおかしいよ。聞こえるだろう?」
呪文は解除したようで、人々の叫び声や走る音が聴こえきていた。
『えぇ。ありがとう、トム』
私はハーマイオニーとジニーを起こそうと、起き上がる。そこへアーサーさんが来た。
「あぁ、ユウミ!起きていたんだね!緊急事態だ!私はジニーを起こすから、ハーマイオニーを起こしてくれ!」
『わかりました!』
私はアーサーさんの指示に従い、ハーマイオニーを起こす。
『起きて!ハーマイオニー!起きるのよ!』
飛び起きたハーマイオニー。
「なんなの?」
『緊急事態なの!』
異変に気づいた様子で、ハーマイオニーはすぐに表情を変えてベッドから出る。
「3人とも、上着だけ持って外に出なさい!時間がないから!...早く!」
ジニーを起こしたアーサーさんに頷き、私達はコートだけ着てテントから出た。そして、ハリー達のところに向かう。酷い状態だった。テントは潰され倒され、火がついているのもある。
頭巾を被り仮面を着けている魔法使いたちが、4人の人を浮かせているようだ。キャンプ場管理人のロバーツさんとその奥さんと子供達だろう。奥さんは逆さまに引っくり返されていて、夜着がめくれて、だぶだぶした下着がむき出しになっている。奥さんは隠そうともがいているが、下の群集は大喜びで囃し立てた。私はそれをみて、顔を険しくさせる。