第80章 クィディッチ・ワールド・カップ
「この試合は、これから何年も語り草だろうな。実に予想外の展開だった。実に...いや、もっと長い試合にならなかったのは残念だ...ああ、そうか...そう、君たちに借りが...いくらかな?」
フレッドとジョージが、自分たちの座席の背を跨いで、バグマンの前に立っていた。顔中でニッコリ笑い、手を突き出している。
「賭けをしたなんて、母さんには絶対言うんじゃないよ」
紫の絨毯が敷かれた階段を、みんなでゆっくり降りながら、アーサーさんがフレッドとジョージに哀願するように言った。
「心配ご無用。このお金には、大きな計画がかかってる。取り上げられたくはないさ」
そう言ったフレッドは、うきうきしているようだ。アーサーさんは、一瞬、大きな計画が何かと聞きたそうな様子だったが、かえって知らない方が良いと考え直したようだ。
まもなく一行は、スタジアムから吐き出されるようにして、キャンプ場に向かう群集に巻き込まれてしまった。ランタンに照らされた小道を引き返す道すがら、夜気が騒々しい歌声を運んできた。レプラコーンが、高笑いしながら手にしたランタンを打ち振り、勢いよく一行の頭上を飛び交っている。
「すごかったわ!あんな試合は、もうこの先見れないんじゃないかってくらいよ!」
「本当ね!素晴らしかったわ!」
ハーマイオニーとジニーが興奮したようにそういうのを私は、微笑んで同意する。やっとテントに辿り着いたときは、周囲が騒がしいこともあり、誰もが眠る気にはなれなかった。そのためアーサーさんは、寝る前にみんなでもう一杯ココアを飲むことを許した。しかし、試合の話で盛り上がり、アーサーさんは反則技のコビングについてチャーリーとの議論にはまってしまう。
『あぁ、ジニー危ないわ!』
ジニーが小さなテーブルに突っ伏して眠り込み、そのはずみに、ココアを床にこぼしてしまったのを見て私は声をあげた。アーサーさんはそれをみてやっと舌戦を中止し、全員もう寝なさいと促す。
『ジニー、もう少しよ』
「そうよ、本当に後少し」
眠たそうなジニーをハーマイオニーと支えながら、隣のテントに来た。眠そうなジニーを促し、私達は着替えてベッドに入る。ジニーはすぐに眠ってしまったようだ。
「ユウミ、私も眠くてたまらないから寝るわ。おやすみ」
『えぇ、そうね。おやすみ』
私はどうしようかと考える。