第77章 移動キーと水汲み
そろそろ限界だと思ったとき、やっと平らな地面を踏みしめた。
「フーッ。やれやれ、ちょうどいい時間だ...あと10分ある...」
アーサーさんが喘ぎながら言ったのが聞こえたが、私は呼吸を整えるので精一杯だった。
「さあ、あとは'移動キー'があればいい。そんなに大きいものじゃない...さあ、探して...あぁ、ユウミは休んでなさい。君に何かあったら、困る」
私はその言葉に甘えることにする。みんなが探しはじめてほんの2、3分も経たないうちに、大きな声がしんとした空気を破った。
「ここだ、アーサー!こっちだ、見つけたぞ!」
丘の頂上の向こう側に、星空を背に長身の人物の姿が影になって2つ立っている。
「エイモス!」
そう言ったアーサーさんが、大声の主のほうにニコニコしながら大股で近づいて行った。みんなも、アーサーさんのあとに従う。私も、ゆっくりとあとを追った。アーサーさんは、褐色のゴワゴワした顎ヒゲの、血色のよい顔をした魔法使いと握手した。男の人は左手にカビだらけの古いブーツをぶら下げている。
「みんな、エイモス・ディゴリーさんだよ。'魔法生物規制管理部'にお勤めだ。みんな、息子さんのセドリックは知ってるね?」
アーサーさんが紹介した。どうやら、セドリックとセドリックのお父さまがいるらしい。
「やあ」
そう言ったセドリックが、みんなを見回した。私は、みんなの後ろにいるため、セドリックからはおそらく見えていないのだろう。私はみんなの隙間から見えているが。
「やぁ」
みんなも挨拶を返したが、フレッドとジョージは、黙って頷いただけだった。去年、グリフィンドールチームを、セドリックがクィディッチ開幕戦で打ち負かしたことが、引っ掛かっているのだろう。
「アーサー、ずいぶん歩いたかい?」
セドリックのお父さまが尋ねる。
「いや、まあまあだ。村のすぐ向こう側に住んでるからね。そっちは?」
アーサーさんが答えた。
「朝の2時起きだよ。なあ、セド?まったく、こいつが早く姿現しのテストを受けてくれればいいのにと思うよ。いや...愚痴は言うまい...クィディッチ・ワールドカップだ。たとえガリオン金貨一袋やるからと言われたって、それで見逃せるものじゃない...もっともチケット2枚で金貨一袋分くらいはしたがな」