第77章 移動キーと水汲み
情けない光景だった。どうやらフレッドとジョージはこの悪戯グッズを、密かにできるだけたくさん持ち出そうとしたようだ。呼び寄せ呪文を使わなければ、モリーさんはとうてい全部を見つけ出すことができなかっただろう。
「"アクシオ(出て来い)"!"アクシオ(出て来い)!"」
モリーさんが叫ぶと、悪戯グッズは思いもかけないところから飛び出してくる。ジョージのジャケットの裏地や、フレッドのジーンズの折り目からまで出てきた。
「俺たち、それを開発するのに6ヶ月もかかったんだ!」
悪戯グッズを放り棄てるモリーさんに向かって、フレッドが叫んだ。
「おや、ご立派な6ヶ月の過ごし方ですこと!O・W・L試験(標準魔法レベル試験)の点が低かったのも当然だわね」
モリーさんも叫び返す。そんなことですっかり、なごやかな出発とは言えない雰囲気になってしまった。モリーさんは顔をしかめたままでアーサーさんの頬にキスしたが、フレッドとジョージはモリーさんよりもっと恐ろしく顔をしかめている。二人はリュックサックを背負い、モリーさんと口も利かずに歩き出した。
「それじゃ、楽しんでらっしゃい。お行儀よくするのよ」
離れて行く二人の背中に向かってモリーさんが声を掛けたが、二人は振り向きもせず返事もしなかった。
「ビルとチャーリー、パーシーはお昼ごろそっちへやりますから」
モリーさんがアーサーさんに言う。アーサーさんは、私、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニーを連れて、ジョージとフレッドに続いてまだ暗い庭へと出て行くところだった。
外は肌寒く、まだ月が出ている。右前方の地平線が鈍い緑色に縁取られていることだけが、夜明けの近いことを示している。私はフレッドとジョージが気になりながらも、ハリーが足を早めてアーサーさんに並んだためそちらに耳を澄ます。
「マグルたちに気づかれないように、みんないったいどうやって目的地に行くんですか?」
ハリーが尋ねる。
「組織的な大問題だったよ。問題はだね、およそ十万人もの魔法使いがワールドカップに来るというのに、当然だが、全員を収容する広い魔法施設が無いということでね。マグルが入り込めないような場所はあるにはある。でも、考えてもごらん。十万人もの魔法使いを、ダイアゴン横丁や9と4分の3番線にぎゅうぎゅう詰めにしたらどうなるか」
ため息をついたアーサーさん。