第67章 バックビークの運命
その隣りをせかせか歩いているのは、ファッジ。2人の後ろから、委員会のメンバーの2人、よぼよぼの年寄りと、死刑執行人のマクネアがやって来た。
「おまえさんたち、行くんだ。ここに居るところを、連中に見つかっちゃなんねえ...行け、早く...」
ハグリッドは、身体の隅々まで震えている。
ロンはスキャバーズをポケットに押し込み、ハーマイオニーは透明マントを取り上げた。
「裏口から出してやる」
ハグリッドについて、裏庭に出る。ほんの数ヤード先、かぼちゃ畑の後ろにある木にバックビークが繋がれていた。バックビークは、何かが起こっていると感じているようだ。猛々しく頭を左右に振り、不安げに地面を掻いている。
「大丈夫だ、ビーキー。大丈夫だぞ」
やさしく言ったハグリッド。今度は私達を振り返り、言う。
「もう行け。行くんだ」
しかし、誰も動かない。
「ハグリッド、そんなことできないよ」
「僕たち、本当は何があったのか、あの連中に話すよ...」
「バックビークを殺すなんて、ダメよ...」
ハリー達が次々言ったが、私は黙っていた。
「行け!おまえさんたちが、面倒なことになったら、ますます困る。それでなくても最悪なんだ!」
ハグリッドがキッパリと言う。仕方なさそうにハーマイオニーが、私とハリーとロンに透明マントを被せたとき、小屋の前での人の声が聞こえてきた。
「急ぐんだ。きくんじゃねえぞ」
かすれた声で言ったハグリッド。誰かが戸を叩く。同時にハグリッドが大股で小屋の中に戻って行った。ゆっくりと恐怖で魂が抜けたかのように、ハリー、ロン、ハーマイオニーと私は、押し黙ってハグリッドの小屋を離れる。私達が小屋の裏手へと廻り込んで行くと、表のドアがバタンと閉まる音が聴こえた。
「お願い、急いで。耐えられないわ、私、とっても...」
ハーマイオニーが囁く。私達は、城に向かう芝生を登りはじめる。太陽は沈む速度を速め、空はうっすらと紫を帯びた透明な灰色に変わっていた。しかし、西の空はルビーのように紅く燃えている。ロンが立ち止まった。
「ロン、お願いよ」
ハーマイオニーが、急がせる。
「スキャバーズがこいつ、どうしてもじっとしてないんだ」
ロンはポケットに押し込もうと前屈みになったが、スキャバーズは大暴れして狂ったようにキーキー啼きながら、ジタバタと身体を振る。