第49章 ディメンター
大広間へとクレア達と向かっていた私は、誰かに呼ばれたため振り返る。
「マーレイ!私のところにおいでなさい!」
ミネルバだ。クレア達に先に行くよう告げて、人混みを掻き分けてミネルバのところに辿り着いた。
「少し、私の事務室で話があります」
心当たりがなかったため、不思議に思いながらもついていく。
「「ユウミ!」」
『あら、ハリーにハーマイオニー?』
中に入った私が目にしたのは、ハリーとハーマイオニーだ。ミネルバに座るように身振りで示されたため、私は座った。ミネルバは、事務机の向こう側に座り唐突に切り出す。
「ルーピン先生が前もってふくろう便をくださいました。ポッター、列車の中で気分が悪くなったそうですね」
あぁ、ディメンターかと思った。前世の記憶がなくても、ハリーが気を失ったのは噂になって私の耳にも入っていた。ハリーが答える前に、ドアを軽くノックする音がして、校医のマダム・ポンフリーが気ぜわしく入って来る。
「僕、大丈夫です。何もする必要はありません」
「おや、またあなたなの?また何か危険なことをしたのでしょう?」
マダム・ポンフリーは、ハリーの言葉を無視し、屈み込んでハリーを近々と見つめた。
「ポピー、ディメンターなのよ」
マダム・ポンフリーにミネルバが言う。2人は、暗い表情で目を見交わすと、マダム・ポンフリーは不満そうな声を出した。
「ディメンターを、学校の近くに放つなんて。倒れるのは、この子だけではないでしょうよ。そう、この子はすっかり冷えきってます。恐ろしい連中ですよ、あの者たちは。もともと繊細な者にどんな影響を及ぼすことか」
マダム・ポンフリーは、ハリーの前髪を掻き上げて額の熱を測りながら呟く。
「僕、繊細じゃありません!」
マダム・ポンフリーの言葉に、ハリーは反発する。
「ええ、そうじゃありませんとも」
今度はハリーの脈を取りながら、マダム・ポンフリーはうわの空で答えた。
「この子には、どんな処置が必要ですか?絶対安静ですか?今夜は医務室に泊めたほうが良いのでは?」
ミネルバがてきぱきと尋ねる。
「僕、大丈夫です!」
弾けるように立ち上がったハリー。からかわれるのが嫌なのかもしれない。確か、もう既にドラコにからかわれていたと記憶している。
「そうね、少なくともチョコレートは食べさせないと」