第9章 君を守る為に
すばるside
仕事中も
家に帰ってからも
ずっと頭の中で
同じことを考える…
なんであいつはあの時
俺にキスをしたんやろうと…
いくら考えたところで
あいつの頭の中なんか
俺に解るわけがないんやけど…
それでも
解りたいって…
解ってやりたいって…
思ってしまうんは
もう仕方ないやんか(笑)
一人きりの部屋の中
ぼんやりとそんなことを
考えてたら…
"ピンポーン"
なんてめずらしく
部屋の中にインターホンの音が
響き渡る…
「はいはい…こんな時間に誰やねん…」
なんて…
文句を言いながら
覗いたモニターには
遠慮がちに
下を向いて玄関の前に立つ
あいつの姿が映ってて
慌てて玄関に走って
扉を開けたら…
なぜか裸足のまま
土と血で黒くなった足を
隠しもせんと
ゆっくりと顔を上げ
「すいません…来ちゃいました…(笑)」
なんて小さく笑って…
「お前…靴は…?」
そう汚れた足を見つめて
呟いた俺に
「あ…あの…これは急いでたから…
履くの忘れて…」
そう言って自分の足に目を向け
もぞもぞと足を動かす
そんなみちの手を掴み
家の中に入れ
ソファーに座らせて
お湯で濡らしたタオルやら
絆創膏やらを適当に準備して
あいつのそばに戻ると
あいつは不思議そうに俺を見つめて
汚れた足をタオルで拭きながら
赤黒く染まっていくタオルに
「これ…だいぶ痛かったやろ…?」
そう言った俺に
「これ…見た目より
全然痛くないですよ(笑)?」
なんて首をかしげて笑う…
いつだってこいつはそうや…
辛くないわけないのに
辛くないふりをして
悲しくないわけないのに
悲しくないふりをして
いまだって
泣きそうな顔して笑ってる…
「これが…
痛くないわけないやんか…?
足の裏いっぱい切れて血でてるし
昼間ひねった足もめっちゃ腫れてるやんか…?
なんでお前はそうやねん…
痛かったら痛いって言うたええ…
辛かった辛いって言うたええやんか…?」