第8章 わがままな想い
みちside
亮ちゃんの家で暮らすようになって
2週間が過ぎて
亮ちゃんがケガをした腕もだいぶ良くは
なってきたけれど
付き人の仕事を理由に
ずるずると家に引き止められ
自分の気持ちも伝えられないまま
結局私は
どこにも行くことが出来ずに
亮ちゃんの家に住み
亮ちゃんの側にいる…
そんな私を
すばるくんはただじっと
何も言わずに傍観し…
私は…
気付いてしまった自分の気持ちに
見て見ぬふりをして
亮ちゃんの側で
ただ頼まれたこと仕事をこなしていく…
こんな心を押し殺す毎日に
息が苦しくなった時は
私は決まって
亮ちゃんにバレないように
こっそりとカバンから
取り出すんだ…
すばるくんがまだ
私の側にいてくれたあの日
"泣きたくなったらこれ握っとけ?"
そう冗談めかして
置いていった帽子を…
すばるくんの匂いは
もう消えてしまったけど
それでもこの帽子を抱きしめると
いつも側にいて
何も言わずに握ってくれた
すばるくんの手の温かさが
じわりと胸に伝わって
またちゃんと息が
出来るようになるから…