第8章 わがままな想い
朝目が覚めて
ノロノロと重い足を引きずり
リビングに出ていくと
ソファーの上に小さくなって
眠るみちがおって
起こさないようにそっと近付き
髪を撫でると
ほっぺたに涙のあとが残っていて
小さく鈍く胸の奥が痛む…
「ごめんな…泣かせて…?」
そう小さく呟いて
涙のあとが残るほっぺたに
指先で触れると
くすぐったそうに
少し眉間にシワを寄せ
ゆっくりと目を開けると
俺の顔を見つめて
「おはよう…亮ちゃん」
そう言うとみちは
泣きすぎて少し腫れた目を擦りながら
にっこりと笑う…
俺に向けられる
この笑顔の奥で
みちが
何を思って何を考えているかなんて
俺には解らんけど
それでもやっぱり俺は
この笑顔を誰よりも近くで
ずっと見てたいんや…
だから罪悪感や
少しの胸の痛みには
気付かないふりをして
「おはよう…」
そう言って俺は
笑顔でみちを抱きしめた…