第7章 難しい恋
すばるside
仕事場までの移動中の車の中
ポケットから取りだした
小さな箱の蓋を開けると
リボンが結ばれた鍵が一つ顔を出す…
これを渡したら
みちはどんな顔をするんやろう…?
"一緒にくらさへん?"
そう伝えたくて
俺の家の鍵にリボンなんか
結んで似合わへんキザなことを
しようとしてるわけやけど
正直どうなるかなんか
俺にもよく解らへん…
ただ側におってやりたくて
ただ側におってほしい
ただそれだけやから…
そんなことを
窓の外を眺めながら
ぼんやりと考えてたら
スマホが小さくぶるぶると震えだして
外に目を向けたまま
耳に当てると
「すばる…くん…?」
震える声で俺の名前を呼ぶ
みちの声が聞こえる……
「どうした……?
何かあったんか…?」
「すばるくん……
りょ……うちゃんが……
りょう……ちゃんが……」
「亮がどうしたんや…?」
「刺されて血がたくさん出てて……
目を開けて……くれない…
亮ちゃんが…死んじゃう…」
取り乱し
泣きじゃくるみちに
「亮はきっと大丈夫や…
今すぐ行くからそこでまっとけ…」
そう言って電話を切り
運転中のマネージャーに
「悪いけど今から
騒がれずに入れる救急病院探して?
なんか亮がケガしたみたいやから…」
現状を伝え
左手に持ったままだった小さな箱を
ポケットに乱雑に押し込んだ…