第2章 三日月宗近の思考
みなが席に着くと、自然な流れで俺に注目が集まった。
先ずは目の前に置かれた茶を一口啜る。
「きみが茶を啜る姿は久しぶりだな。」
鶴が足を崩して頬杖をつき、俺同様に茶を啜る。
「…本当に。薬研がまだ目を覚ましませんが、私もこの様に穏やかな気持ちでお茶を頂くのは久しぶりです。」
一期は両手で湯呑みを包みホッと目を閉じた。
「三日月、さっきの話しの続きだが…。」
長谷部は正座で姿勢を正し、俺に話しを促す。
もう一口茶を啜ってから、みなを一瞥すると湯呑みから手を離し両の手を膝の上に軽く置き、視線をみなへと戻した。
「先程の話しの続きだったな。 …俺は言った通りアキラに俺達の主になって貰おうと思う。」
鶴がいつになく真面目な視線を俺に向ける。
「きみがあの神様を気に入ったというなら、俺達は反対しないが俺達だって主になる前に神様と一度話しをしたいな。」
「そうだね。僕も異論はないけど鶴さんが言うように神様と話しをしてみたいね。」
光忠が微笑むと、倶利伽羅が同意するように頷く。
「だが、時の政府をどう説き伏せる?」
小狐が先を話せと促してくる。
「この本丸のこんのすけは、すでに前審神者の手で亡き者にされた。 …すでにこの本丸は時の政府に見捨てられた場所だ。時の政府を説き伏せる必要があるか?」
長谷部が厳しい面持ちで俺を見る。
長谷部の怒りが混じる気持ちをピリピリと感じ、少々苦笑いをしてしまった。
「なに、俺とてこちらから態々時の政府に伺い立てるつもりは無い。 本丸が機能していれば慌てて来るだろう。」
俺の言葉に小狐と長谷部がきょとんとする。
「俺の主はすでにアキラだ。 時の政府からの許可など必要ない。」
「確かに我々の形取る神気は彼のもの。私も時の政府に伺い立てる必要はないように思えますな。」
一期が俺に同意すると、長谷部が咳払いを一つする。
「では、みな異論はないということで良いか?」
長谷部がみなの顔を見回すと、みな笑顔で軽く頷く。
「では決まりだな。」
茶をもう一口頂こうと湯呑みを掴むと薬研の布団がもぞもぞ動くのが視界に入る。
「薬研!」
すぐさま一期が薬研の元へと駆け寄った。
「……一兄?」
久しぶりに聞く薬研の声は少しだけ掠れていた。
「薬研どこか痛いところはないか?」
長谷部も一期に次いで薬研の元へ行くと、薬研の体調を聞く。