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ブラック本丸に舞い降りた異形の神

第2章  三日月宗近の思考


神気の行き届いた本丸内は、玄関を開けると清らかな風が体内を吹き抜け心が洗われるような安楽に満ち足りる。
俺の腕の中で未だ目を覚まさないアキラに一度視線を落とし審神者の部屋へと連れて行く。
「三日月、審神者の部屋に布団を敷いておいた。」
俺が審神者の部屋に着くと長谷部がアキラを寝かせる為の準備をしてくれていた。
「おお、すまんな。 助かる。」
アキラをゆっくり布団へ寝かせると一期が掛け布団を静かにかける。
「光忠殿と鶴丸殿が会議の用意をしてくれてます。私達も参りましょう。」
「……あいわかった。」
一期と長谷部が先に部屋を出て行き、俺はアキラから離れる前に自分の左手に身につけている手袋を外してアキラの手に握らせる。
「アキラ… 何処にも行くでないぞ。」
こんな手袋一つでアキラを縛り付けるなんて出来るとは思っていないが、何もせぬより良い。
元は人間だと教えてくれた この優しい神様にどうしてか惹かれた。
もう一度、審神者を迎えるなら俺はアキラが良い。
誰もが見捨てたこの本丸を偶然でも良い。 アキラが見つけて俺を… 俺達を救ってくれた。
涙が出るほど嬉しかったのは初めてだ。 これほど離れたくない存在はアキラが初めてだ。


審神者の部屋を出て直ぐの角を曲がると壁に背を預けた小狐がいた。
「三日月、薬研のことだが… まだ目を覚まさぬ。」
「…前審神者の影響か。」
「嗚呼。…わしも薬研のように刀身が折れておったが、こうして起き上がり歩くことも出来る。……薬研のやつも俺のように起きるとは思うが… なにぶん闇堕ちが一番酷かったからな。」
小狐の視線の先には、今しがた一期が薬研を抱きかかえて会議の部屋へと入って行く所だった。
「薬研はどこにおったのだ?」
「……手入れ部屋におった。 だが恐らく資材として使う為に捨て置かれてたのだろうな。」
「……そうか。」
俺と小狐は、どちらからともなく会議の部屋へと歩みを進めた。

会議の部屋へと入ると長方形の光沢ある白い木材のテーブルを囲い座布団が敷いてあり、座布団には既に鶴と長谷部が座っている。
倶利伽羅が茶を淹れ、光忠が茶菓子を用意していた。
会議の部屋には似つかぬ布団が長方形のテーブルに平行に敷かれ、一期が薬研を寝かせている所だった。

期待を胸に始めるか…。
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