第1章 三日月宗近の祈り
アキラを抱き抱えたまま本丸に向かう。
鶴に他の者を迎えに行って貰おうと思うたがそれは必要なさそうだな。他の者もアキラの神気を目印に此方へ向かって来る。
本丸の厨の方から燭台切光忠と大倶利伽羅が、近侍の部屋からへし切長谷部が、審神者の部屋から小狐丸が、粟田口の大部屋から一期一振が姿を現した。
「ねぇ、これって…。」
燭台切光忠が此方に向かいながら俺の腕の中で目を回しているアキラに気付く。
「それ… 神か。」
「倶利ちゃん! 神じゃなくて神様でしょ?」
「おぉ!光坊に倶利坊!懐かしいな!」
鶴は駆け出して燭台切と倶利伽羅に抱き付いた。
「龍の子等か、久しいな。」
彼らの姿を見るのはいつ振りであろうか。
「この状況、説明して貰えるか?」
「私もよろしいでしょうか?これは一体?」
「そのお方が新しいぬしさまに?」
長谷部に一期、小狐丸が俺の方に歩み寄る。
「嗚呼、アキラという神様でな。俺の心の声を聞いて助けに来てくれた。」
「助けに……」
一期一振の眉間に皺が寄り表情が曇る。
俺以外の者が一期一振同様、苦渋に満ちた顔に変わって行く。
「みな、なぜもっと早く助けに来てくれなんだと思っておるのであろう?」
眉を下げ皆を見ると皆がなぜ?と言う顔で俺に視線を向ける。
「実はな。もう俺がアキラを責めてしまったものでな。」
思わず顔が緩む俺とは反対に俺の一言で皆一様に口をあんぐりと開く。
「君、なんて事を…。」
「しかし鶴よ。おぬしとて同じ事を思ったのであろう?」
「まあ、そうだがしかし…。」
鶴から視線をアキラへと移すが未だにアキラは起きる気配がない。
「…神様は三日月、アンタに何と言ったのだ?」
長谷部が眉根を寄せ不安げな顔で聞く。
「そうだね。 僕も神様がなんて言ったのか聞きたいな。」
燭台切は眉毛を下げて長谷部同様に不安げな顔で俺を見る。
「此処を見つけたのは残念ながら本当につい先程だそうだ。俺よりも辛そうな顔で謝られてな…。俺の声を聞いたのと同時に此処での出来事を知ったそうだ。」
俺の言葉を聞いて皆 複雑な顔になる。
それは少し前の時間の俺と同じ心境なのであろう。
俺は苦笑いしながらこれから俺が考えていた考えをみなに話す。
「それは本当に可能でしょうか?」
一期一振は不安を口にしながらも俺の考えには賛同しているらしい。