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ブラック本丸に舞い降りた異形の神

第1章 三日月宗近の祈り


鳥のさえずりが聞こえ、花の香りや青草の香りが鼻孔をくすぐる。
恐る恐る瞼を開くと、先程の眩しい光の代わりに今まで見たどんな人間よりも美しい青年が目の前に立っていた。
「三日月宗近、貴方の願いを私に叶えさせて下さい。」
呆然として動かない脳ミソを無理矢理 働かせ口を動かそうと、カラカラの喉に唾液を飲み込む。
「そなたは… 一体…。」
そう言うだけで今の俺には精一杯だった。 目の前の青年からは溢れんばかりに漏れ出る神気が物語っている。 彼は… 神……?
俺の問いに目の前の青年はふわっと笑顔になる。
「私はアキラ。愛と造形美の神として東北の地に祀られています。」
「神…… 」
頭がついていかない。 だが……。
辺りを包み込んでいた瘴気が一瞬で消え、清々しいこの爽やかな空気は人間では出来ぬ芸当。
それに青年の後ろには、先程まであった廃墟と化した本丸ではなく、新築のように綺麗な本丸が建ってる。
視界に桃色の何かがチラつくのに気付き、ふと視線を下ろすと花弁が二枚着物に付いていた。 ボロボロであった着物は元の綺麗な着物に戻っている。
頭上を見上げれば満開の枝垂れ桜が風でそよそよと揺れ、視界いっぱいに桃色が広がっていた。
思わず見上げたままの格好で自分の頰を思い切り抓る。
「フフ…。夢じゃないですよ。」
視線を目の前のアキラという神に戻すと彼は柔らかく笑っている。
思わずこちらまで顔がふにゃりと緩む。
「そうか… そうか。 そなたは神か。」
人の身を得て初めて澄んだ空気を目一杯吸い込み、軽く息を吐き出す。
「聞きたいことは沢山あるんだが、先ずは仲間を迎えに行かんとな。」
目の前に手を差し出され、吸い込まれるようにアキラの手を掴む。
掴んだ手は暖かく胸の奥まで暖まる感じさえした。

アキラの手を握りゆっくり立ち上がると少し見下ろした高さにアキラの顔がある。
見上げていた時は大きく見えたがこうして並んでみると頭一つ程小さいな。
「先ずは、鶴の奴を迎えに行こう。 確かあやつは離れの…。」
口に出してから思い出したが鶴は先々代の主のお気に入りというやつで、扱いは監禁に強姦といった最悪なものであった。
暗く落ち込む気持ちを俯き拳を握ることで紛らわせようとしたが、アキラの手を握ったまま力を込めてしまい思わず顔を勢いよく上げる形になった。
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