第2章 彼等は恩人
いやそれでも、
と言えない自分に腹が立った
__俺は何故ハナの前では弱気になるんだろうか
「……サンジはいい人だね」
「そうか?」
「だってサンジは本音で話してくれるもん
……私はそう信じてる」
……信じてる、か
そんな言葉、率直に伝えてくれた人今まで何人いたっけ……
「……いつかさ、ハナちゃん」
「ん?なあに?」
「……俺の過去をみてもいい、
だから……俺にハナちゃんの過去をみせてくれないか」
「……私の過去を?」
「……あぁ」
ハナは暫く黙って見つめあっていた目を逸らした
「……うん」
「無理にとは言わない、俺の勝手な思いだが……
ハナちゃんのことをもっと知りたい」
「……わた、しを」
一人熱くなっていた自分にハッとした
撤回しようとハナをちゃんと見た
……あれ?
「…わたし、を……」
彼女は目を見開けて震えていた
俺には目を合わせようともしない、いやむしろ見えてない?
彼女は自分の手で腕をぎゅっとつねっている
痛そうなのにそれすら気にもとめない
「……ハナちゃん?」
「……」
___
『……サンジ!ねぇ!しっかりして!』
___
「っう゛!?」
頭に突然記憶が流れ込んだ
それは、ハナちゃんが怯えながら……
攻撃を放ってしまい、それを俺は真に受けて
気を失った俺の肩を揺さぶる光景
こんなの知らない、なのに俺はその流れ込んだ記憶に不思議と
__身に覚えがあり、既視感がある
彼女が、ハナが攻撃を放つ時の顔と、今の怯える顔は
あまりにも、そっくりだった。
「ハナちゃん…」
「! あ、ごめんサンジ……」
「!!ハナちゃん!大丈夫か?!」
ハッとして現実に戻る
ハナが気を取り戻した
俺はハナちゃんが熱をひいていないか手を彼女の額に当てた
「……あ」
……熱はないみたいだ
「熱は無いみたいだな、俺気に触ること」
「あ、違う!えっと……なんでもないの!本当に」
「……」
ハナちゃんの嘘は女性に騙されやすい俺にでもわかるほど……下手くそな嘘だった
でも
「__そうか」
「うん……」
俺は追求しなかった
彼女は信じてくれているから