第2章 彼等は恩人
「……どうせ契約の身だ、適当にあしらえばいいや」
ハナは電伝虫をポッケにしまった
近いうちに隠れて電伝虫を使える
夜の甲板以外の場所も決めなきゃなぁ
ため息つきながらまたハナはお酒に口をつけた
「……ここは暖かくて眩しいのに、私はそれを裏切っている」
暗いなんでも飲み込みそうな海を眺めながら、ぼんやりとしてみる
「……まっくら」
はぁとため息ついていると、
私のグラスの中とは違う氷の音がした
「!、サンジ」
「まだ起きてたんだな、ハナちゃん」
ニッとして彼は私の横に立った
彼も手すりに両手を乗せ、持ってきたお酒を一口飲んだ
そしてゆっくりと床に置く
「……ふう」
「サンジお疲れ様、もう洗い物終わったんだ」
「?あぁ、長いことしてたら慣れるからなぁ……」
流石麦わら海賊団のコック
伊達に仕事をしていない
彼の手をちらりと見ると赤くなっていた、すこし皮がめくれて荒れてしまっている。
思わずハナはグラスをそっと床に置いて、サンジの手を両手で包んだ
「!?」
予想外の行動にサンジも驚く
ハナは反対に冷静に彼の手を暖めた
「……冷えて荒れてるね、サンジの手」
「あ、あぁいや、こんなのチョッパーのクリームつけりゃあどうってこと……!てかハナちゃんの手が冷えちまう!」
離そうとするサンジの手をぐっと止めた
「!」
「……サンジ、じっとしてて」
「え?」
戸惑いながらもサンジは大人しくハナに従った
それを確認したハナは手に軽く力を込める
「歴史消去……」
「!」
するとサンジの手はたちまち荒れも冷えも消え、健康的な手に戻った
サンジはバッとハナから手を引き離して、自分の手を見る
……あぁ、治ってる と
「ハナちゃん……今」
「大丈夫!料理の腕とかは消してない!今から手が荒れてしまう前までの歴史を弄っただけ」
「いや、ええと……その」
「?これくらい大丈夫だよ」
「……」
サンジは能力の凄さにまだついていけず
返す言葉も見つからなかった
ただ一つだけ気になって仕方がない
「……サンジ?」
「…あ、いや……」
この能力、余りにも強さと弱みが釣り合ってない
ハナはもしかして
「なあ、ハナ……」