第2章 彼等は恩人
電話相手の青キジは黙る
電伝虫が震えて私の服のポッケに入っていたのに気づいたのはさっきの宴最中だ
いつ忍ばせたのか見当もつかない
「……だんまり?」
なかなか答えない青キジに問うようにすると
「……ん、朝か?」
「寝てたの?!」
まさかの今の一瞬で寝ていたらしい
驚いた、そんなに忙しいのかこの人
「無理いうんじゃないよ、だらけきった正義の俺が寝てないのよ?
そらあ寝るに決まってるでしょうが」
「……はぁ」
それに賛同は流石に出来ない
これが赤犬と同等の立場にいるのがなんでなのか毎回考える
「それで、麦わらの一味はなんて言ってた?」
「なんてって……」
「横流し、それが私らの契約でしょうが」
ハナは吃ってしまった
情報とはいえ……海軍に有益な情報は得てない
「……海軍にとって有益な情報は得てないよ」
「本当か?」
「……わざわざ嘘をついてメリットある?」
「……」
青キジは黙ってしまった
仕方がないだろ、まだ1日経ってないんだよこっちは
呆れていると電伝虫がため息をついた
「……だと思ったよ、まぁこれからも適当に暇な時にかけてやるから心配するな」
「一生かけなくていいよ」
「それは俺が困るんだよ」
どうせ今鼻をほじりながら業務をこなしているくせに
「……まあ私も聞きたいことはあるんだよ青キジ
なんで私にチャンスを与えた?」
「……」
まただんまりか、そう思っていると
「……まだ、言えないな」
「まだ?」
は?
すこし苛立ちハナはお酒をくいっと飲む
「まだハナ、お前が信用出来ないからな
そうだな、情報一つ仕入れてきたら教えてやるよ
それだとフェアじゃねぇか、そう思うだろ?」
うまいこと逃げやがった……くそ
まあ妥当か
「……わかった、契約は契約
生かしてもらってるからその分協力してやるよ
ただ皆に危害加えないでね、ヘタしたら自害する」
「……怖いねぇ」
念を押しておく
恩人だ、傷はつけさせない
「わかったよ……だがこの作戦は一部しか知らない
それ以外は流石に俺でも無理だ、勘弁してくれ」
「……」
それは流石に無理か……まあいい
それぐらいは飲んでやらないと
「わかった、あんまりかけてこないでよ」
「はいはい」
適当にたしなめて青キジは電伝虫を切った