第2章 彼等は恩人
「あぁ……」
満足そうに返事するサンジに調子が狂う
……これが女たらしか
「んじゃあ私少し夜風に当たってくるよ
お酒まだ少し残ってるし、自分で洗っておくから持っていくね」
カラン と氷の音を奏でながらハナはグラスをとった
「ん、いやシンクに置いてくれたら俺は……」
「ううん、サンジ……はまだ仕事沢山あるでしょ?
ここにある空いた食器とかさ、手伝いたいっていっても」
「「大丈夫だ、俺がやる」」
サンジがいうタイミングと同時にハナは台詞を言った
サンジは驚いて え と声を漏らす
「……今の」
サンジの考えに当たりだと頷いた
「__君はそう言って譲らないからね、
またねサンジ」
「……あぁ、ハナちゃんおやすみ
無理して飲まなくていいからな」
そういいグラスを彼は指さした
「ううん、美味しいから全部飲むよ。
ありがと」
ハナはニコリとしてから外へ出ていった
サンジはハナを見送ってから
テーブルに広がる食器を片付けることにした
途中一つの食器に目が止まった
ハナの使っていたお皿だ
「……ハナちゃん美味しく飯を食ってくれたみたいで良かった」
どの席の食器よりも丁寧で綺麗
テーブルマナーが忠実だ
コックとしてこれはとても嬉しい
酒瓶に目を移した
「甘めで、かといって甘すぎず……少し苦味もある
そんな魅惑するようなお酒が好きだとは」
ハナちゃんが宴中に1番喜んでくれたお酒の瓶を手に取る
__fascinating.
魅惑的
まさにそのままの意味の名前のお酒だ
「……彼女通りだ」
フッと笑みがこぼれ、サンジは気を取り直してまた片付け始めた
…
「……潮風が気持ち地いい」
ふわりと耳の横を通り過ぎては消える
少し酔って火照った体に丁度いい。
波の音を聴きながら一口お酒を飲んだ
……うん美味しい、なんて名前のお酒なんだろ
後で聞いておこう
サンジに用ができたなと思いながらハナは静かに震える電伝虫のボタンを押した
「__お待たせ、青キジ」
「ほんっと遅いじゃないの、早く寝たいってのに」
__電話の相手はそう、青キジだ
「ごめんって、怪しまれたくないでしょ
それにしてもいつ忍ばせたの?この電伝虫」