rain of conflict【黒バス/ナッシュ】
第1章 rain of conflict
名無しは、程よく時間が経過していたことでシャワーから出て、いつのまにか、部屋の入口に立っていたナッシュに驚愕した。
そして零された言葉にハッとし、勢いよく上半身を起こした。
自分がまだ裸で、掛けたシーツのように彼の服を握り締めていた状態であったことも構わずに・・・だ。
ナッシュは濡れたまま、まだ乾き切らない自分の髪を一度掻き上げると、怠そうに形だけ羽織ったバスローブ姿でベッドに歩み寄った。
名無しが飛び起きて目が合うまでは、部屋の扉の傍、壁にもたれていたのだけれど。
歪に口元を迫り上げ、まるで弱みを握らせていただきました、とでも言わんばかりに黒々とした微笑を見せるナッシュに、
名無しはどうにも狼狽してしまい、そんな状況にはただただ動揺するしかなかった。
まんまと見られてしまったということだ。
彼の服を抱き締め、それから何をしようとしていたか――。
「ナッ・・・」
「それで・・・?そんな大事そうに持ってるんだ・・勿論見せてくれるんだろう?」
名無しには既に余裕などなかった。
ナッシュがシャワーを浴びているあいだの、あの一人寝具で微睡んでいた時間にもしも戻れるのなら、神でも何でも縋りたいと強く思うほど・・。
彼は名無しの傍、ベッドに腰を下ろすと、その場で長い足を組み姿勢を作った。
肌蹴たローブからは引き締まった脚が見え、端麗な筋肉が覗いている。
名無しの後頭部に腕を伸ばし、彼女を至近に迎えながら唇が触れるように言葉を続けると、ナッシュは名無しの顔色を静かに確かめた。
自分の発言で動揺を見せるかが気になったのだ。
元々割り切っている身体だけの関係・・・それを追い打つようにして改めて口にした酷いそれを、瞬時的に彼女がどう捉え、どう感じたか。
その瞬間の、名無しの目の動きや表情を見ていた。