rain of conflict【黒バス/ナッシュ】
第1章 rain of conflict
その身を抱く度に思うのは、ただ性欲を処理するためだけに抱いていた筈なのに、そう思えなくなっていたこと。
情に流されるとか、そんな軽い一言で終わらせられるものでは勿論なかった。
ナッシュは絶対に名無しの望む言葉を口にすることはないけれど、少しずつ、本当に少しずつ・・・望むものを連想させる行動は起こしていた。
また自覚と無自覚を彷徨いながら。
たとえばそれが、恋慕を匂わせる別の意の言葉であっても・・・。
「!ナッシュ・・・あ、ッ・・・やめ・・、おっき・・――ぁ・・」
一人、どこか熱情を込めた視線を彼女に送る・・。
暫く横向きだった名無しの身体を、ナッシュは再び腕一本で仰向けさせた。
馬乗れば彼女に逃げ道はない・・・まさに窮鼠だ。
ナッシュはローブを脱ぎ捨てると、それを大きなベッドの上、自分たちの足元の方へと投げやった。
仰向けさせた時に奪った自身のユニホームは、ソファの傍に置かれていた名無しの服があった場所へ、重なるように勢いをつけ放っていた。
別れても匂いを・・・彼女の服に自分の跡が残るよう、わざとそう仕向けた。
「っ、ぐ・・・・」
毒を零すナッシュの薄情そうな唇は、何度見てもその薄らいに揺るぎがない。
どうにも罵られ慣れていた所為だろうか、その毒の中に稀有に混ざる甘い言葉は、名無しにはいつだって刺激が強かった。
甘美なものだと認識できても、それがつまりどういうことか・・・自分の解釈で合っているのか聞き返せないのもまた、今の自分たちの歪な関係に纏わりつく現状なのだ。
確かめる勇気など――あればとうの昔、きっともっと好い関係になれていただろう。
問いかけることは、まだまだ怖かった。