第2章 一人、また一人
本丸で暮らし始めてから5日
大人数で暮らすことを想定された広い本丸にはまだ私と清光とこんのすけの3人しかいない
今日もこの本丸には清光の声が響く
「主ー、今日は晴れてるから洗濯するよ
洗うものあったら出しておいて」
「分かった、ありがとう」
一ヶ月審神者の務めを果たすと決めたはいいものの、いまだ肝心の敵がいない
いや、それ自体は本来とてもいいことなんだけど…
おかげで私は畑仕事や馬の世話、食事や洗濯やらの家事をしてばかりで
稽古の相手すらいない清光もそれを手伝ってくれている
なんだろう、とても…平穏すぎるような___
「…ねぇ、こんのすけ?」
「ふぁい?」
私の横でもぐもぐと油揚げを頬張るこんのすけに声をかけると、これまた平穏な、というか間抜けな返事が返って来た
「失礼致しました、昨日手に入れたこの油揚げがこれまた大変美味で…」
「う、ううん、邪魔してごめん」
「それで、なんのご用件でしょうか?」
「あの、審神者になったばかりだから分からないんだけど、時間遡行軍ってこんなにも現れないものなの?」
「時間遡行軍ですか…いえ、現れてはいますよ」
「え!?」
こんのすけはまるでたいしたことでもないかのようにそう答えた