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【BL】創作跡地。

第2章 理想の夢を見る方法。



 はっきりとした明晰夢を見たのは初めてだった。風景はいつもと変わらない自分の部屋。でもこれは夢だと確信があった。ベッドから降りてリビングに入るとそこには笑顔の両親がいた。…現実の両親はこんな風に笑いかけてはくれない。朝の準備を済ませて学校へ行く。教室のとびらを開けるとクラスのみんながこちらを見て、侮蔑なんか微塵も感じさせない笑顔で挨拶された。現実のクラスメイトだってこんな風に挨拶だってしてはくれない。こんなにも現実を思い知らされる夢なんて今までに一度だって見たことはなかった。耐えきれずいつもの図書室へ行くとそこには誰もいなくて、一旦椅子に腰を下ろした。


「…そういえば」


 椅子から立ち上がり、現実で見た本を探した。ざわざわと胸騒ぎがする。図書室の奥へと歩みを進めると見たことのある銀字のタイトルが再びチラと光った。まるで見付けられるのを待っていたようだ。その本を手に取ると、現実で見たタイトルと少し違っていた。


「…理想の夢を見た感想」


 見る方法ではなく、見た感想に変わっている。気味の悪さを感じたものの、だけどこの夢は自分にとって悪いものではない気もする。そうだ、だってこの夢は昨日自分であの紙に書いた、


 そこで目を覚ました。枕元に投げたはずの紙は何故か手に握っていた。くしゃくしゃに丸まった紙を開くと、貼っていたはずの髪もセロハンテープも剥がれて無くなっていた。『みんなが笑いかけてくれる夢』そう書かれた紙を見て小さく溜息を吐いた。

 あの本に書かれていたことは本当だった。書かれている通りにすれば見たい夢が見られる。ざわりと僅かに胸が疼いた。




おわり
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