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【BL】創作跡地。

第1章 屋上の噂。



 とある噂話を聞いた。高校生の好奇心とは恐ろしいもので、その噂を確かめようと進む足は屋上へと向かう。噂の真偽は結局のところどうでもよかった。ただの肝試し感覚。それだけ。それに噂の内容も突拍子もないものだ。絶対に嘘。そう言い切れるくらいに。

 だから本当に人がいて驚いた。

 案外すんなりと開いた扉に自分を含め背後の二人も息を呑んだ。立ち入り禁止と書かれていた札を越えてきたばかりに、屋上の扉は施錠されているものと思っていた。屋上の扉は鍵がかかっていて入れませんでした、終わり。そうなるはずだった。
 そろりそろりと開いた扉の隙間から念の為と屋上の様子を伺うとそこには仰向けになり煙草を吹かしている人がいた。背後から生唾を飲み込む音が聞こえる。先に聞いた噂話が頭を過った。


―――屋上には目付きこそは鋭いものの、とても綺麗な人がいて、


 風に靡く黒髪がさらさらと揺れる。細い指が煙草を挟み、離れた口元から吐き出される煙はふわりと空気に溶けた。


―――お願いを聞いてあげるとその代わりに、


 扉がかたりと音を立て、目の前の顔がゆっくりとこちらを向いた。流れる髪から覗く瞳がまっすぐにこちらを射抜く。思わず息を呑むほどに綺麗な顔だった。


―――童貞をもらってくれるんだって。



「おい」


 低い声が空気を揺らした。全員の体が跳ねる。驚きのあまり誰も声を出せないでいると足音が近付き無理やりに扉がこじ開けられた。視線を合わせるように目の前にしゃがみ込んでは煙草の煙を吹きかけられ、それに咳き込むと知ったことかと舌打ちをされた。
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