第6章 伍
夏目「あのさ、小野さん……」
惚けていた私の耳に届いたのは、さっきまでみんなと話していたはずの夏目くんの声だった。
「気休めに、なるかはわからないけど……田沼と多軌も、妖怪に襲われたこと、あるんだ。だから、2人にも、話を聞いてみるといいかもしれない……初めて妖怪を見て、怖いっていう気持ちは、どうしたら楽になるのか……そういうことは、常に見えている俺にはわからないから……」
田沼くんと、多軌ちゃんも……妖怪と……
夏目「大丈夫。何かあっても、俺が力になるから……あ、俺だけじゃ頼りないかもしれないけど……先生もいるし……だから、そんなに怖がらなくて、大丈夫。絶対、力になるから。」
「夏目くん……ありがとう。すごく、心強いよ。本当に、ありがとう。」
笹田「もー、2人ともー! 本当に置いてくわよー!」
夏目「あぁ、すぐ行くよ! 行こう、小野さん!」
「うん!」
夏目くんがいるなら、大丈夫っていう気がしてきた……不思議だけど。
妖怪……か……今度、多軌ちゃんと田沼くんにも話、聞いてみよう……。