第6章 伍
夏目「つまり、君がさっき聞いた声は妖怪の声なんだ。普通の人には聞こえないはずなんだけど、ごくたまに、聞けたり、見えたりする人がいる。……小野さんは、多分聞けるひとなんだ。」
「夏目くんは……見えてるの?」
夏目「うん……見えるし聞こえるよ……」
「そうなんだ……」
夏目「でも、そんなに心配しなくていいとは思う。ただ聞こえるだけなら、周りに誰かいない状況なら応えなければいいだけだから。周りに誰かがいるときは、少し不審がられたりするかもしれないけど……」
ニャンコ先生「よく聞こえるのか?」
「えっと……実は、あんな声が聞こえたのは今日のが初めてで……」
夏目「そうなのか?」
ニャンコ先生「あぁ、それなら心配いらんな。夏目が近くにいたせいだろ。」
夏目「え、俺のせいなのか?!」
「夏目くんと一緒にいると聞こえるようになるってこと?」
ニャンコ先生「まぁ、多少は夏目の影響はある。聞こえるようにというか、全体的に妖ものへの反応が敏感になるくらいだろう。今までほとんど聞けていなかったのだから、そう心配することはない。ほとんど田沼と同レベルだ。」
夏目「そうか……よかった……」
ニャンコ先生「まぁ、気をつける必要はあるがな。せいぜい、妖ものの声が聞こえても、無視することだな」
「は、はい……。」
それにしても、田沼くんと同レベル……って?
「あー、いたいた!! 夏目くーん、沙也香ちゃーん!」
「あ……純ちゃん……?」
聞こえた声に顔を上げると、駅の方から歩いてくる純ちゃんたちの姿が見えた。