第5章 肆
ニャンコ先生「驚いたな。あれだけ彼奴の近くにいたにもかかわらず、毒気に充てられたわけではなさそうだ。」
夏目「そうだ、あの妖怪、小野さんに力があるって……」
ニャンコ先生「あぁ、田沼くらいの力はあるんじゃないか。」
「田沼くん……?」
夏目「それじゃ、見えたり……」
ニャンコ先生「それは本人にしか分からないだろうがな」
「見える……? 何が……?」
夏目「あ、いや、えっと……」
「よく分からないけど……さっき……夏目くんと、猫ちゃんと、野太くて、ガラガラした知らない声が話しているのは、聞こえていたよ……相手がどんな人なのか、見つからなくて分からなかったけど……」
夏目「声は、聞こえるんだ……」
ニャンコ先生「驚いたな。ひょっとしたら、田沼よりも強いんじゃないか」
夏目「それで、彼奴……」
ニャンコ先生「力がある奴からはうまそうな匂いがするからな」
うまそう……な匂い……?
「なんの、話?」
そういえば、さっきも、あの野太い声がそう言っていたような……
ニャンコ先生「もう素直に言ってしまったほうがいいぞ。本人は自覚しておらん様だが、自分が力を持ってることを知らんと、身を守りようがないからな」
夏目「そう……だな……でも……」
ニャンコ先生「まぁったく、お前は。言わんとこいつ、また襲われかねんぞ。」
夏目「っ?!」
「え、あの、さっきから、なんの話をしているの……?」
話の筋がさっぱり見えない。
夏目「小野さん……説明するから、落ち着いて聞いてくれ」