第5章 肆
風が止むとほぼ同時くらいに、知らない、野太い声がぼんやりと聞こえはじめた。
その声と、夏目くんが口論……してる……?
でも、声の主はどこにいるのか分からない……
ただ、声だけが聞こえている状況。
何が何だかわからなくて、ただただ、目の前で起こっていることに驚いていると、突然、夏目くんがこちらを向いた。
夏目「小野さん! 逃げろ!」
「え、」
夏目くんが私の方に駆け寄ってくるより一拍早く、私の体に衝撃が走った
「ぅ、あ!」
骨がミシミシと軋む音が聞こえそうなくらい、きつく締め付けられる身体。
初めて味わう痛みに、どうしていいかわからなくて、声を出すことも叶わないくらい辛くて、口をパクパクと開閉させるにとどまる。
私……このまま死ぬのかな……